研究概要

 ユビキタスネットワークの基盤技術の実現と評価

   日常生活では目に見える画像情報の信号、会話の際には音声情報の信号、医療分野では脳波や心電図の信号といったように、私たちの周りには数多くの信号が存在し、私たちに情報を常に提供しています。 これらのアナログ信号と呼ばれる信号は、ディジタル信号に変換することで、コンピュータなどのディジタル回路を用いて代数的演算で処理されます。 これがディジタル信号処理という技術です。

   本研究室では、電波を使った通信・放送(Communication and Broadcasting)・センシング(Sensing)、エネルギー伝送(Energy transfer)に関する研究を行っています. シミュレーションによるアルゴリズムの研究だけでなく、マルチコアプロセッサやFPGAを利用した実装を行うことを特徴としています。

第5世代及び第6世代移動通信(5G/6G)では、広帯域・大容量通信を実現するために、ミリ波/サブテラヘルツ波帯といったマイクロ波よりも高い周波数の電波が利用されています。このような高周波帯の電波は、直進性が強く、回折しにくいため、通信エリア内に所要品質を達成できないカバレッジホールが発生します。このカバレッジホールの発生を防ぐ手段として、基地局を追加設置する方法や、反射板を用いて基地局の電波をカバレッジホールの発生箇所に向けて反射させる方法があります。しかし、前者については、カバレッジを大幅に改善できるものの、通信エリア構築のコスト増加や景観の劣化が懸念されます。後者は、基地局を追加設置することなくカバレッジを改善できるものの、通常の金属反射板は、電波を鏡面反射するため、反射方向が制限される問題があります。

そこで、 本研究室では、電波の波長よりも十分小さい多数の周期素子で構成されるメタサーフェスを反射板に応用し、カバレッジホールに基地局からの電波を反射させる研究を行っています。この反射板では ...詳細はこちら


第5世代及び第6世代移動通信(5G/6G)では、広帯域・大容量通信を実現するために、ミリ波/サブテラヘルツ波帯電波が利用されています。しかし、このような高周波帯の電波は、直進性が強く、特に非見通し領域において、信号カバレッジ制限やスペクトル効率の低下が問題となります。

近年、この問題を解決するために、大規模アンテナアレーで構成されるMassive Multiple-Input Multiple-Output(MIMO)基地局や大規模リフレクトアレーで構成されるIntelligent Reflecting Surface(IRS)と呼ばれる反射板が注目されています。これらの技術では、ビームフォーミングが用いられており、カバレッジ内のユーザの達成可能な伝送レートが最大となるビーム方向を事前定義されたコードブックから網羅的に探索します。しかし、Massive MIMO基地局やIRSは、大規模アレーで構成されるため...詳細はこちら

電気自動車(EV: Electric Vehicle)の普及は,カーボンニュートラルの実現には必須です.しかし,EVの普及には充電が問題となります.現状のEVでは,電池残容量が少ない状況から満充電に近い状況まで充電するためには,急速充電器を使っても30分程度,普通充電は数時間以上かかります.また,充電インフラが十分ではありません.2022年8月現在,全国で約17,000か所の充電スタンドが設置されているものの,多くの拠点で一度に充電できるEV数は1または2台となっており,現在でも繁忙期には充電待ちが発生しています.さらに,急速充電器はピーク消費電力が数十kWから数百kWに達するため,電力グリッドに大きなインパクトを与えることが,充電インフラ整備の大きな障害となります.

EV充電に係るこれらの問題を解決する方法として,走行中の自動車に非接触で給電を行う走行中ワイヤレス給電 (DWPT: Dynamic Wirelss Power Transfer)が注目されています.本研究室では,より効率的かつ安定したDWPTの実現を目指して,複数のワイヤレス給電送受電器を組み合わせて用いるMIMO (Multiple-Input Multiple-Output)技術の利用したDWPTや伝送線路型結合回路を用いたDWPTの研究を行っています.

光ファイバ無線(RoF : Radio over Fiber)は、高周波無線信号を光ファイバ伝送路に閉じ込めて伝送する技術です。特に電波の形式を保存したまま伝送する形態をアナログRoFと呼び、ディジタル信号に一度変換する形態をディジタルRoF と呼びます。 

第4世代移動通信における無線アクセスネットワーク(RAN : Radio Access Network)では、基地局間の連携により、セルエッジでも伝送速度が劣化しないための通信方式が用いられるため、中央にある制御局でベースバンド信号を処理し、光ファイバリンクで接続された無線局で高周波信号を生成することで、厳しいタイミング制御を実現していました。このようなモバイルフロントホールの形態を特に、C-RAN (Centralized RAN)と呼びます。

第5世代移動通信システム(5G)やBeyond 5G/6Gでは、モバイルフロントホールに要求される遅延時間や伝送帯域がさらに厳しくなったため...詳細はこちら

測位衛星や放送衛星が送信した信号は、大気中の様々な気象要因により減衰、遅延します。例えば、降雨で衛星放送の信号電力が減衰することはよく知られています。

さらに、対流圏に含まれる水蒸気や、様々な粒子により電波の進行が遅れます。地上に配置したGNSS局において遅延時間を精度よく推定することができるため、対流圏の水蒸気量などを推定することができます。

これは地上に配置した気象センサーでは知ることができない情報であり、例えば水蒸気量から積乱雲の発生を予測できれば、降雨の予測が可能...詳細はこちら