光ファイバ無線 RoF

光ファイバ無線 (Radio on Fiber) を活用した光・無線融合通信基盤の発展に向けて

光ファイバ無線(RoF : Radio on Fiber)は、高周波無線信号を光ファイバ伝送路に閉じ込めて伝送する技術です。特に電波の形式を保存したまま伝送する形態をアナログRoFと呼び、ディジタル信号に一度変換する形態をディジタルRoF と呼びます。

第4世代移動通信における無線アクセスネットワーク(RAN : Radio Access Network)では、基地局間の連携により、セルエッジでも伝送速度が劣化しないための通信方式が用いられるため、中央にある制御局でベースバンド信号を処理し、光ファイバリンクで接続された無線局で高周波信号を生成することで、精密なタイミング制御を実現していました。このようなモバイルフロントホールの形態を特に、C-RAN (Centralized RAN)と呼びます。

第5世代移動通信システム(5G)やBeyond 5G/6Gでは、モバイルフロントホールに要求される遅延時間や伝送帯域がさらに厳しくなったため、無線信号で行われる信号処理を分割して負荷を分散させ、伝送路の要求帯域を下げる工夫がなされています。 これをFunctional Splitと呼んでいます。

このような背景のなか、伝送遅延が非常に小さいこと、信号を一箇所に集約できること、要求帯域が最低限であること、電波の信号形式に依存しないこと、アンテナサイトの無線機の構成が簡易であること、などの特徴を有するアナログRoFによるモバイルフロントホールは、移動通信だけでなく、異種無線のための無線アクセスネットワークの候補となっています。

本テーマでは、アナログRoFのもつ特徴を損なわずに、無線信号を高品質に伝送するための通信方式に関する研究を行っています。

LPWA  不感地解消

長距離伝搬を特徴とするLPWA (Low Power Wide Area) は、見通しの悪く障害物の多い伝搬路では性能通りの伝搬距離を実現できません。LPWAの不感地を解消するためには中継局を配置しますが、中継に対応したLPWA信号しか中継できません。本テーマでは、920MHz帯の 多種の アンライセンスバンドのLPWA信号を中継するために、アナログ光ファイバ無線 (A-RoF)を構築し、遠隔地での無線エリアを拡大するためにの回線設計法の研究を行っています。

有無線統合 MIMO伝送

アナログRoF (Radio on Fiber)

電気信号を光信号へと変換し、光ファイバ上を伝送させ、再び電気信号へ戻す技術

従来、アナログ信号を用いた伝送では、雑音や伝送路の影響を受けやすいためモバイルフロントホールへの応用が積極的に行われてきませんでした。一方で、今後、通信端末の増加やトラフィックの急増により、フロントホールに要求される伝送帯域が大きくなることが予想されます。そこで、本グループでは、改めてアナログRoFに注目し、モバイルフロントホールとしての実用化に向けた課題を検証し、改善することを目的としています。

図1 実験装置

有無線統合MIMO伝送

アナログRoFによるモバイルフロントホールを導入するシステムとして、下の図2のような構成を考えます。従来アンテナサイトに分散されていたBBU (Base Band Unit) をDU(Distributed Unit)に集約し、そこからアナログRoFによるモバイルフロントホールを用いてアンテナを張り出すことで、アンテナサイトの装置で行われるベースバンド信号処理をなくし、高周波信号処理のみにすることができ、基地局の小型化や導入及び運用のコスト低減に繋がります。

このようなRANは、展開された基地局でのデジタル信号処理を必要とせず、DUですでに処理を終えたアナログ信号をシームレスに伝送するため、有無線統合伝送と呼ばれます。

この研究テーマでは、アンテナごとに固有の光ファイバを有する有無線統合MIMOシステムにおいて、図2中の"Wired Part (有線部)"に存在する周波数応答のうち電力応答に注目し、アンテナに接続される各ブランチの電力応答の差が無線MIMO伝送に与える悪影響の改善のための手法を提案しています。

アナログRoFを用いた有無線統合MIMO伝送

異種無線信号の光一括伝送 

バックホール回線のシェアリング

現在様々なIoT機器が無線を介してデータを送信しています。IoT機器は主に信号処理部と無線インターフェース部から構成されており、設置場所、消費電力、移動度、バッテリーサイズ、処理能力、信号伝送量、通信にかかるコスト、給電にかかるコストなどを考慮して機種選定を行いますが、無線サービスエリアの対象地域であることが必要です。無線サービスが圏外の場合は、無線インターフェースの選択に制限が発生しユーザビリティが高いとは言えません。

本テーマでは、光ファイバ無線の広帯域伝送特性を活用して、異種の無線信号を単一のバックホール回線により収容する通信方式を研究しています。ライセンスバンドとアンライセンスバンドのLow Power Wide Area (LPWA) の信号を区別せずに、高品質に伝送するための広帯域光ファイバ伝送のための回線設計技術やキャリア間相互変調歪抑圧の研究を行っています。

また、異種のLPWA信号を受信可能なアンテナ技術と、IoT機器から送信されたデータをサーバに蓄積し、処理するためのクラウドサービス構築に関する研究も同時に行っています。

以上のように、異なる無線サービス信号が同一の場所で共存でき、アンテナとバックホール回線の共用を推進することで、ユーザとオペレータの利便性を高めることを目的としています。

機械学習による故障検知  Fault detection using machine learning

アナログ光ファイバ無線回線には、多数のデバイスが用いられています。例えば、半導体レーザ、高周波増幅器、光ファイバ伝送路、アンテナなどです。これらの機器の故障検知を行う場合、半導体レーザには、光出力のモニタリング、増幅器には電気出力のモニタリング、光ファイバには光時間領域反射計などの専用の機器が必要になります。本研究では、本格的な故障検知が発生する前に、回線やデバイスの不調を簡易に検出することを目的として、機械学習の適用を提案しています。

右の図のように、アナログ光ファイバ無線 (A-RoF) と無線MIMO伝送がつながった、有無線MIMO伝送路の応答を Rxで推定できると仮定します。伝送路の相関を除くために、電力応答行列の固有値を算出し、正常時と故障時の分布を確認します。

左の図面は固有値の比と正常クラスと故障クラスの境界を示しています。訓練時のクラスに重みをもたせることで、境界線が異なる分類器が生成されます。分類器はガウスカーネルを用いたサポートベクトルマシンを用いました。


の図の水平軸は、訓練時の重みを表します。垂直軸は、誤警報(fa : false alarm )、見逃し (md : miss detection),  条件付き確率 (cp : conditional probability)をそれぞれ表します。条件付き確率は、分類器が故障を検知した条件で、故障由来であった確率です。故障時間率を10^-4 と仮定しています。

右のグラフのように クラス重みを調整し、 fa を低減することで cpは改善する一方、肝心の md が増加します。実用上は分類性能を確保しつつこれらのバランスをとることが重要です。

メンバー

<教員>

東野武史 准教授 (higa@is.)

<学生>

M2  石井 大智 ishii.daichi.if2@naist.ac.jp

M2  河瀬 浩毅  kawase.koki.km9@

教員メールアドレスは@isの後に、naist.jpを省略しています。
学生メールアドレスは@の後に、naist.ac.jpを省略しています。